Lordの日記

遊び学ぶ居心地の良い空間創りがLordのテーマです

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The Starting Point

20060928143336
 学生時代に尊敬するゼミのT教授にある質問をしたら、「君は私の拙い訳書を読んでるから解らないんだ、まず原著を読みなさい。」と言われました。学会でも重鎮のT教授に、出来の悪い私が「そんなこと言わずに教えて下さいよ。」とも言えず、そのまま図書館に直行し、原書と主たる参考文献を借り、難行苦行の日々が始まりました。
 今現在でも難解な古典的名著として読み継がれるその原書は、当時の私にとっては宇宙からの手紙を読解するようなものでした。その後T教授はお会いする度に、「謎は解けたかい?」と声をかけて下さいましたが、しどろもどろで進捗状況を説明するのがやっとでした。
 読み進むにつれ、必要な参考文献・論文の数と疑問点は雪だるま式に増え、絶望的な気持ちで前進する毎日でした。たった一行の為に一週間、前に進めないこともありました。発端の疑問点は解決した訳ではないのに、疑問ですらなくなり、何故そのような質問をしたのかさえ、分からなくなっていました。
 夏休みのゼミ合宿の打ち上げの夜、宴席でT教授に半ば諦め気味に「あと200年かかります」と現状を報告しました。多くの先輩方が目が合うだけで縮み上がると言う伝説の鋭い眼を一時も逸らす事無く、厳しい表情で私の絶望的な報告を聞き終わった先生は、「僕も40年近くそんな生活が続いてますよ。」と初めて見る優しい笑顔でおっしゃいました。
 最近、T先生訳のその本を何年かぶりに読みました。原書の難解さと読みにくさが嘘のように簡潔で、実にエレガントな名訳です。「この訳で読んで解らなかったら、センス無いから専門変えたほうがいいよ。」若い学生が質問に来た時、私ならそう指導しそうです。当時の原書や学問に対する理解は怪しいものでしたが、私の現在の研究生活の原点は今は亡きT先生のあの笑顔の一言であり、ゼミ合宿の場所がここ軽井沢でした。
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