Lordの日記

遊び学ぶ居心地の良い空間創りがLordのテーマです

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滑る

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 早朝からの雪は、いつの間にか雨に変りました。石畳や大理石の上にできたシャーベット状の膜は、ツルツルよく滑ります。都市の人の流れが、いつもより心なしかゆっくり感じられます。都市の生活では、底が平らでツルッとした靴を履きます。濡れた路面との相性はあまり良くないのですが、最近では雨や雪の日にレインシューズを履いている人をあまり見かけなくなりました。
 昔は街の靴屋さんの店頭でよく見かけた雨靴というのも、最近では子供用位しか見る事がありません。ファッションなのか面倒臭いのか、シャーベット状にぬかるんだ街路を行く人達の足下は皆いつもの靴です。確かに一旦駅やビルに入ってしまうと、レインシューズは不要です。と同時に、あまりかっこ好いとはいえません。お洒落な方ほど足下には気を使われるかと思います。
 朝一番グチョグチョな駅前で滑って転んでしまうと、絶望的な気分になります。転んだ事の恥ずかしさはその場を去れば忘れられますが、泥だらけのコートや衣類は着替えない限り終日そのままです。大昔私が受験生で、センター試験がまだ共通一次と呼ばれていた頃、その年の初日の朝は大雪でした。受験票を見せながら東大本郷の門を入った所で、突然私の前を歩いていた女の子が転びました。その途端辺りが晴れた昼間のように明るくなりました。
 門の内側は報道カメラの放列が花道を作っており、明るくなったのは一斉にたかれたカメラのフラッシュでした。「大丈夫?」。仰向けに大の字に倒れたままの彼女は、頭を強く打ったようです。「頭くる!縁起悪い!」と言って立ち上った彼女は、身体に付いた雪を掃うこともなく歩き始めました。雪の付いた背中はしゃくり上げるように小刻みに震えていました。やがて立ち止まり、大きな声を出して泣き出した彼女の顔は子供のようでした。
 それまで距離をおいて沈黙を守っていた見ず知らずの受験生達は、一斉に彼女に声をかけました。「怪我しなかった?」と言って、身体の雪を掃ってあげる女の子。「先に滑っとけばもう滑らないよ」「ニュースや新聞にあれ出たら苦情の電話してやる」と、優しいライバル達。その一日を彼女がどのように送ったかは知る由もありません。ベチョベチョな雪が降る東京で、雪の日をスマートに振舞う事はなかなか難しいです。因みにその年の入試で、私は見事に滑りました。
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