Lordの日記

遊び学ぶ居心地の良い空間創りがLordのテーマです

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小さな袋

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 階段を下り重い扉を押して閲覧室に入ると、広い空間の所々に灯りが見えます。光の散らばり方には如何なる規則性も見出せないのですが、無意識にバランスを取るかのような位置までゆっくり移動し新しい明りを灯します。両手に抱えた書籍や資料を分厚い机の上に置くと、重い椅子を引き深く腰掛けます。視線を縦に移動すると、薄っすら点る照明器具で高い天井の位置が確認できます。
 ほとんど物音は聞こえませんが、灯りの数だけこの空間に存在する人のエネルギーを感じます。軽く周りを見渡してから、自分の点した光の中に入ります。一旦この光の中に入ると、その外は漆黒の闇の世界となります。音や人の気配さえ遮られます。机上に積まれた書籍を開くと、やがて空間は本の中で無限に拡がり始めます。無限の空間でワープを繰り返し、壮大な旅は続きます。
 30年前の恩師の言葉に、「本は宇宙で図書館はその入り口」というのがありました。集中力に欠け直ぐに気の散る私にとって、当時図書館は本当に宇宙の入り口でした。自宅の机上ではいつの間にか遊び始め、無機的で明るい自習室では周りの人を眺めていてそのうち眠ってしまう。時を重ね様々な感覚が鈍った現在では、いつでもどこでも本を開いた瞬間に旅立ちワープしていますが・・・。
 携帯電話の無かった当時、そこには悪魔、否悪友の誘いも及びません。旅の中断と帰還を促すのは「閉館ですよ」という職員の声、そして若かったので空腹くらいでした。時々机の隅に、そっと小さな袋が置かれます。集中していて、置かれたのに気付かなかったことの方が多かったと記憶しています。袋の中はいつも甘い和菓子でした。お饅頭やどら焼き、温かい鯛焼きが入っていた事もありました。
 ここでロマンチックな展開を期待した方には申し訳無いのですが(私も残念です)、置いてくれていたのは恩師です。気付いた時は急いで振り返りますが、いつも後姿です。立ち上がり教授の遠ざかる背中に無言でお辞儀をするのですが、袋を見た途端お腹がクークー鳴ります。休憩室で濃いコーヒーを啜りながらいただく和菓子(特に餡子)は、また格別でした。本来ケーキが大好きな私が、今でも集中して読んだり書いたりすると急に和菓子が欲しくなります。脳の記憶なのでしょうか。
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